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手の疾患として多いのは、指先、もしくは手首の疾患でが、
こぶしを握り締めた状態で、怪我をした場合、こぶしの頂点のところで、
生じる怪我もあります。
これは、パンチ動作でこぶしの山の部分で強い外力がかかった場合、
関節の周囲で腱や関節包が傷つく場合があります。
こういった疾患のことを「Boxer’s knuckle」と言います。
この疾患は、指の伸筋腱脱臼と良く似ていますので、
その違いなどについてこのページで述べていきたいと思います。
同じ方の手を上から見た写真です。
ペン先で示した部分が少し腫れていることがわかります。
その原因は、指りこぶしを作ろうとした際に、
伸筋腱が本来の位置から逸脱してしまっているからです。
それを繰り返しているうちに、関節周囲が痛みを伴って
炎症を起こして来るために腫れてしまったからです。
別の患者さんのものですが、以下の動画は腱が本来の位置に収まらず、
脱臼してしまっているものです。
指のMP関節部は、中手骨の周りに関節包が存在し、
さらにその上には、sagittal bandという軟部組織があります。
sagittal bandには浅層と深層があり、
それぞれが緊張を保つことで伸筋腱が正しい位置にくるようになっています。
Boxer’s knuckleは、これらの伸展機構が破たんすることで起こる疾患です。
病態としては、sagittal bandが断裂した状態であり、
関節包まで至った損傷であると考えられています。
17歳、高校3年生の男性です。
剣道部に所属していて、
2週間前に練習で竹刀が右小指の付け根に強くぶつかってから、
痛みと弾発現象が出現したそうです。
弾発現象の消失がないため、手術を行う事になりました。
Boxer’s knuckleは、MP関節部で痛む場合、
このような疾患があると頭に入れていれば、見逃すことはあまりありません。
上の症例で示したような縫い合わせるだけで修復が可能な場合もあれば、
受傷から時間がたっていると、手術しても修復が難しいケースも出てきます。
単にこぶしの先を打撲したと判断しないで、
指の曲げ伸ばしの際に違和感があった場合には、
早い目に整形外科を受診されることをお勧めいたします。
ここまでは外傷によるものですが、ここからは非外傷性のものを説明させていただきます。
外傷がなく弾発(ばね)現象があるとばね指と思われがちですが、実は違います。
症例2 26歳女性 左小指の弾発現象が主訴でばね指ではないかと思われ、来院されました。5年前より左小指の弾発現象には気が付いておられましたが、日常生活上で支障が生じていなかったのでそのまま過ごしておられました。しかし、来院する1カ月前からパソコン業務中に左小指でキーを叩く頻度が急激に増え、痛みが出てきたため受診されました。
上の動画では一見、小指を伸ばす際に、弾発現象が手のひら側で起こっているように見えますが、実際は違う箇所で生じていました。
実際には、このように手の甲側で小指を伸ばす腱が脱臼しており、弾発現象が出ていました。
御自身でばね指と思って来院された方でも実際にはこのような病気もあります。
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