“ばね指の起こりやすい指、起こりにくい指：

（女性の親指、男性の小指に多いのはなぜ？）

当院で2003年から2024年までに手術をした患者数は6341名で、手術総数は7190指であり、一人あたり1.13件の手術をしていた。手術時に2指以上の手術をしていた患者さんは約11％と考えられた。

7190指のばね指に対して左手と右手の手術件数及び各指別手術件数を割り出し、下の図のように棒グラフにして、ばね指の起こりやすい指、起こりにくい指を検討してみました。

　結果、ばね指は両手に同じ頻度で起こるわけではなく、両手の10本の指にも同じ頻度で起こるわけではありませんでした。左右の手指の手術件数は、7190件のうち、右手は4108指、左手は3082指で、右手が1.3倍と多かった。一般に右利きの人が多いため右手指がよく使われるためと考えられました。

男女別手術件数は女性4224指、男性2966指で女性が1.42倍と男性よりも多くばね指が起こっておりました。女性では50歳以降、ばね指の手術件数が急増していたことより女性ホルモンの低下（更年期障害）が反映されているものと考えられました。

各指の手術件数について：各指の手術頻度は左右とも全く同じ傾向で女性では親指（母指）＞中指＞薬指（環指）＞示指＞小指の順であった。男性では中指＞薬指（環指）＞親指（母指）＞示指＞小指の順であった。手術件数は女性では親指（母指）1593指（右941、左652）＞中指1446指（右882、左564）＞薬指（環指）729指（右465、左264）＞示指361指（右205、左156）＞小指95指（右59、左36）の順であった。男性では中指1119指（右585、左534）>薬指（環指）756指（右414、左342）＞親指（母指）495指（右249、左246）＞示指412指（右201、左211）＞小指184指（右107、左77）の順であった。女性の場合、親指（母指）と中指、男性では中指と薬指（環指）の手術数が多かった。少なかった指は男女とも小指でした。手術件数で男女差の大きかった指は親指（母指）と小指でした。親指（母指）の手術数は女性1593指、男性495指であり、男女比は3：1と女性に圧倒的に多かった。小指の手術数は女性95指、男性184指で男女比は1：2と男性に多かった。

ばね指の発生原因は性ホルモンの低下、糖尿病などの病気以外、それぞれの指の使用頻度、使い方が大きく関与すると考えられます。従って、男女のばね指の発生頻度の違いは、日常生活における手指の使い方の違いが反映されているように思われました。

中指の手術件数

中指の手術件数は女性1446指、男性1119指で女性が1.3倍と多かった。女性では親指（母指）に次いで多く、男性では５本の指の内で一番多かった。中指のばね指は物を強く握るなどの動作で発生するように思われました。作業で工具の柄を強く握る場合、スポーツなどでダンベル、バーベルを握る、下肢の骨折で松葉杖の柄を握る、タオルを絞る、パン生地をこねるなどの動作では中指に力がかかることが多いため、ばね指が発生しやすいように思われた。

薬指（環指）の手術件数

薬指（環指）の手術件数は女性729指、男性756指で男女ほぼ同数であった。環指の場合、ばね指の手術件数は中指より少なかったものの、中指とほぼ同様の理由でばね指が起こるように思われた示指の手術件数

示指の手術件数

示指の手術件数は女性361指、男性412指と男性にやや多かった。

小指の手術件数

男性に多かった。その理由

小指の手術件数は女性95指、男性184指と男女とも最も少なかった。小指は男女とも使用頻度が低いためばね指の発生が少ないと思われました。しかし、男女比は男性が女性の２倍あり、ゴルフをする男性が多かった。ゴルフ人口は男性に多いこと、ゴルフではゴルフクラブを小指でしっかり握るために小指のばね指の発症が多いと考えられた。

以上、それぞれの指の使われ方により、ばね指の発生数に差が生まれるのではないかと思われた。