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机の角などで肘をぶつけたときに、指先がしびれた経験はありませんか?
肘の部分で神経が長く圧迫されると小指側がしびれるという疾患があります。
これを「肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)」といいます。
さらに詳しく見ると、肘の内側で尺骨神経は、内側上顆についている尺側手根屈筋の間にまたがるFibous bandの下をくぐります。
これらの構造を総称して「肘部管」といいます。
しかし、このFibrous bandが何らかの原因で緊張が続くと、尺骨神経は圧迫され、圧迫された部位の上側が
瘤のように腫れてしまいます。
この状態を「偽神経腫」といいます。
この写真は肘の部分を輪切りにしたものです。
偽神経腫の部分では神経が太く写ります。
(①の部分))
偽神経腫から少し先へ向かうと、Fibrous bandによる神経の圧迫部分があり、徐々に神経が細くなっていきます。
(②の部分)
そして、さらに先に行って、肘部管の奥へ進むと、神経がぺちゃんこにつぶれています。
(③の部分)
こうなってくると、神経は刺激を伝達できず、手の小指側の感覚が鈍くなり、しびれ感がでてきます。
また手の変形として、小指が曲がってきたり、指の細かい動きがしづらくなります。
エコーの映像と、手術時の所見を比べてみると、エコーで忠実に病態が確認できていたということがわかります。
では、どうのような治療をするのかというと、一過性の場合は様子を見ていく猶予があります。
しかし、小指の変形や、しびれ感による日常生活上の支障などをきたしている場合には、Fibrous bandの圧迫部分を切除して、神経を圧迫から開放してあげるのが最善策です。
以下で、肘部管症候群の手術のイメージ動画をご覧ください。
まだ早期だったので、筋肉が痩せるなどの症状が見られず、指の動きも完全ではないですが、ある程度できておられたので、経過をみました。
すると、約2週間後にはしびれも改善し、こちらの写真のように指の変形も消失していました。
原因としては、睡眠時の一時的な圧迫が考えられました。
ですので、同じような症状がある場合には、睡眠時の姿勢を注意するように指導しました。
56歳の男性、2週間前の作業中に転倒して、腕の内側を強く打った後、手の脱力が生じたので来院されました。よく見ると、手の小指側のしびれ感と、写真の赤矢印で示した範囲に指先にしびれが生じる叩打痛がありました。上の図の①~②で示した範囲に何かしら原因があると考えられました。
整形外科に行ったところ、首が原因だといわれ、治療をしていましたが、軽快しないため当院OBの紹介で受診されました。
こちらの写真の赤矢印の先で示したように、骨間筋が痩せて、青色矢印で示したように小指が変形しています。
レントゲンを撮ると、小さな骨片などもある肘の変形性関節症だとわかりました。
さらに詳しく診るためCTを撮ると、小さな骨片が無数にあり、肘部管部分は骨の変形により狭くなっていることがわかりました。
さらに造影剤を入れてレントゲンを撮ると、黄色矢印の先で示した部分で、神経の圧迫が疑われ、変形性関節症による肘部管症候群と判断されました。
手を開いたり閉じたりしても、指が曲がることもなく、動きもスムーズでした。
このように、初診時は筋萎縮があり、症状がかなり進行していても、手術で回復するということがあります。
発症後一年未満で治療を始めた場合には、このように予後が良好な場合が多く見られます。
発症後長くほおっておいた場合には、手術後、以前より症状は改善しますが、完全に手の機能が回復する確率が低くなってきます。
ですので、なるべく早い段階で、治療に入ることをお勧めします。
63歳の男性です。
右の小指側がしびれるということと、指が完全に伸びきらないということで、来院されました。
しびれている部分を詳しく確認してみると、こちらの写真にあるように、小指と、薬指の半分がしびれて、感覚も鈍くなっておられました
別の角度から見てみると、小指と薬指は完全に伸びきらない状態でした
指の動きを確認してみると、左手は、指全てがきちんと閉じることができるのに対して、右手は、小指が完全に閉じることができない状態でした。
では、どの程度神経が障害されているのかを見るために、神経伝導速度検査を行いました。
左の表は健側の神経の速さを表したもので、刺激が1秒間に約60m進むことがわかります。
ところが右の表は患側での刺激の伝導速度は、1秒間に約16mしか伝わらないことがわかりました。
これらの所見から、神経が障害され、機能が悪くなっていることがわかりました。
術前には完全に伸びなかった指が、
術後約3週間ぐらいで伸びるようになりました。
また、小指を術前は閉じることができなかったのですが、
術後は改善されていることがわかります。
患側では、この写真のように、刺激が筋肉に伝わることを確認できませんでした。
そこで、来院されてから約2週間後に、肘部管開放術の手術を行うことにしました
手術時の所見では、エコーで確認した通り、Fibrous bandによる圧迫が原因で、尺骨神経が細くなっていました。
Fibrous bandを切離するだけで手術を終えました。
その後、経過も順調で、痺れ感も軽減してきました。
肘部管症候群は早期発見、早期治療が大切です。
医学的にも長く罹患しておられるケースでは手術後の成績も悪くなる傾向があります。
当院では、肘関節部の局所麻酔下で手術を行い、
手術時間も短時間で、
患者さんに負担の少ない日帰り手術を行っています。
術後肘関節をギプス等で固定することもありません。
指のしびれや変形を認めた場合、
できるだけ早い段階で診察を受けて、
早く治療を受けられることをお勧めします。
小指側にしびれがある方は、
できるだけ早い段階で、
専門医の診断を受けられることを御勧めします。
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