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腫瘍と聞いて、大変な病気ではないかと思われる方が多いかと思いますが、
このページでご紹介する「グロームス腫瘍」は摘出することで完治する良性腫瘍です。
指先の爪の下にできるので、爪に何かが当たるとひどく痛みます。
その部分に当たるとか、触れるなどのようなことが何もなければ、違和感がある程度です。
このページでは、「グロームス腫瘍」について御覧いただき、
こういった疾患もあるのだということをご理解いただければと思います。
この腫瘍の特徴は、以下の表のように3つの徴候があるといわれています。
以上の症状があれば、この腫瘍の診断ができるといわれています。
発生する部位で多いのは圧倒的に爪の下ですが、
まれに指腹部、手背部にもできるという報告例もあります。
上の左図にあるように、指神経は左右の指の脇を上がっていきます。
そして、神経の終点は爪先の両脇付近です。
ですので、グロームス腫瘍が爪先の青丸印付近で発生した場合は、
神経の直上に存在することとなるので痛みがはっきりとしています。
逆に、上の図の赤丸で囲まれた爪先中央付近に腫瘍があった場合には、
比較的痛みが軽いということになります。
以上のことから、グロームス腫瘍は爪先の痛みの加減によっては、
最初、はっきりとわからないことがあります。
しかし、冷水に手をつけるテストをすることで、過敏性が誘発されるので、診断がつきます。
グロームス腫瘍を診断する客観的な検査の方法に、レントゲンやエコー検査などがあります。
以下で、レントゲンとエコー検査によるグロームス腫瘍の特徴的な画像所見をご覧いただきたいと思います。
レントゲン検査では、罹病期間が長ければ長いほど、グロームス腫瘍により骨が圧迫を受け、形が変化します。
これは骨自体に腫瘍ができたわけではなく、単に外から腫瘍によって圧迫され、骨の表面の組織が薄くなってしまっただけです。
良性の腫瘍ですので、心配は要りません。
上の写真のように、健側と一緒にレントゲン撮影を行う事で、違いがはっきりわかります。
エコー検査では、どの位置にどのぐらいの大きさの軟部腫瘍があるのかを確かめます。
さらに、カラードップラーで軟部腫瘍を観察すると、腫瘍周囲に多血管の増殖が見られるため、動脈性の信号(赤色矢印で示した部分)を示します。
以下が実際のカラードップラーでグロームス腫瘍を観察した動画です。
グロームス腫瘍が存在しない場合は、カラードップラーによるエコー検査を行っても何も描出されません。
一方、グロームス腫瘍が存在する場合は、カラードップラーによるエコー検査で、
腫瘍周囲に動脈性の血管増生が見られます。
したがって、赤色の動脈性の信号が確認できます。
以上のように、カラードップラーを用いたエコー検査はグロームス腫瘍の確定診断に非常に有用です。
ここで色々とグロームス腫瘍の特徴的な症状(blue spot・圧痛・冷水テスト陽性)を述べてきましたが、
これらの症状を有していない場合も存在します。
その時に、カラードップラーによるエコー検査で、患部を観察し、
血管増生の画像が確認できた場合には、グロームス腫瘍と確定診断することができます。
当院では、臨床症状や、エコー画像、さらには、エコーによるドップラー画像でも、
はっきりと判断しかねるとき、MRI撮影を行います。
以下の図は、爪下のグロームス腫瘍です
MRI画像では、赤色矢印で示したように、グロームス腫瘍はT2強調像にて高輝度変化が見られます。
腫瘍自体が小さく、エコー検査などで、判断がつかない場合には、
追加でMRI検査を行うこともあります。
当院では、グロームス腫瘍に対して、手術療法を行っています。
爪の下に隠れていることが多いため、爪を除去して、腫瘍を摘出しています。
そこで、患者さんから「爪はどれぐらいで戻るの?」とか、
「爪は何カ月ぐらいで生えてきますか?」といったご質問をよく受けます。
以下の写真は、参考程度ですが、患者さんの手術後の爪の状態をご紹介します。
上の写真は、それぞれ違う患者さんのものですが、だいたいこのような過程を追って治っていきます。
個人差がありますが、約1年で、元のような状態に戻っているようです。
手術後、水仕事などは、爪が完全に生えていない状態でも、患部の傷口が治れば可能となります。
以下で、実際の症例を御覧いただきたいと思います。
症例1 36歳の女性です。
右親指の爪の痛みを訴えて来院されました。
2年前より、右母指の爪が痛く、触れると激痛が走るということです。
冷えると、特に痛むとおっしゃっていました。
こちらの写真は、初診時の外観写真です。
圧痛と書いた赤色矢印で示す部分を触れると、痛みが走るそうです。
爪が割れているのも確認できました。
そこで、グロームス腫瘍を疑い、冷水テストを行った結果、赤矢印で示した右母指の爪半月部分に色調の変化がはっきりと見られ、痛みがさらに増強しました。
グロームス腫瘍は指先の痛みとして長年見逃されることもよくあります。
触れたり、当たったりするとひどく痛みますが、
通常、生活の上で問題なく過ごされていらっしゃる患者さんが多いのも特徴的な点です。
しかし、痛みがひどくなって来院されると、腫瘍が骨を侵食するまで大きくなっていたということもあります。
基本的に良性の腫瘍なので、さほど心配することはありませんが、
痛みがひどい点が非常に問題になります。
指先に当たると激しい痛みがあり、何か変だと思われたときには、
早めに整形外科を受診される事をお勧めします。
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